木もれびコラム
心不全のお薬 後編
前回の続きです。補足ですが、収縮能が低下した心不全 (HFrEF) は、RAA系(レニンアンジオテンシンアルドステロン系)や交感神経系が活性化し、“馬車馬にむち打つ”状態になるため、さらに心臓の機能が悪化することを、循環器領域ではリモデリングといいます。この悪循環を阻害し、リモデリングを抑制することで、予後を改善することが慢性心不全の治療治療の中心です。
MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
HFrEF(ACE阻害薬やβ遮断薬服用中)の方に、MRAを追加するとさらに予後が改善するというお薬になります。
ミネラルコルチコイド(代表的なものはアルドステロンと呼ばれます)は、Na+の再吸収(いわゆる塩です)とK+の排泄を促進します。そこを阻害することで、塩の再吸収を抑制し、心臓への負担や血圧低下作用を来します。高K血症や腎機能障害などの副作用があるため、ACE阻害薬やARB服用中の患者さんには注意が必要です。
SGLT2阻害薬
もともと糖尿病薬として開発されたお薬で、腎臓の尿細管からの糖の再吸収を抑制し血糖を低下させる作用があります。
驚くことに糖尿病を合併していない、慢性心不全にも効果が報告されています。詳しいメカニズムは不明な点もありますが、利尿作用や交感神経過剰興奮の抑制、酸化ストレスの軽減、体重の減少などの効果があり、心不全イベントの抑制効果があります。
さらに慢性腎不全への効果も報告されており、今後さらに期待される薬ではありますが、ループ利尿薬の併用でナトリウム利尿の効果の増強や正常血糖ケトアシドーシスなど、注意すべき点はあります。
このお薬は何のために飲んでいるのか、副作用が気になるなど、ご不明な点があれば。お気軽に相談ください。