木もれびコラム
高齢者の入院で起こる「筋力低下」と「認知機能低下」
~病気が治っても元の生活に戻れなくなる?~
「肺炎で入院、退院後に歩けなくなった」、「心不全は良くなったのに、退院後に体力が落ちてしまった」など、このような話を耳にしたことはないでしょうか。
高齢者では、病気そのものだけでなく、「入院中の安静」が体力低下の大きな原因になることが知られています。
わずか10日間の安静でも筋肉は減少する
筋肉は年齢とともに減少しやすくなりますが、高齢者では特にその影響が大きく、入院や安静をきっかけに「サルコペニア(加齢や病気に伴う筋肉量・筋力の低下)」が進行することがあります。
さらに、筋力低下に加えて活動量の減少や疲れやすさ、体重減少などが重なると、「フレイル(加齢に伴う心身の虚弱状態)」へとつながり、転倒や要介護状態のリスクが高まることが知られています。
健康な高齢者を対象とした研究では、10日間のベッド上安静により下肢の筋肉量が約1kg減少し、筋力や歩行能力が低下することが報告されています(Kortebeinら, 2007年 JAMA)。
また、安静期間が長くなるほど下肢筋力は低下し、2週間程度の安静では約10%前後の筋力低下がみられることが報告されています。

The Aging Muscle in Experimental Bed Rest. Front Nutr. 2021 より改編
筋肉は年齢とともに減少しやすくなりますが、高齢者では特にその影響が大きく、「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」や「フレイル(虚弱)」につながる可能性があります。
入院で認知機能も低下することがある
高齢者では、入院中の活動量低下や環境変化により、一時的な認知機能の低下やせん妄(意識の混乱)がみられることがあります。
環境の急激な変化や病気のストレス、病室で過ごす時間が長くなり、人との会話が減る、昼夜逆転が起こる、運動量が減るといった状況により、退院後に「以前より物忘れが増えた」と感じる方も少なくありません。
特に高齢の心不全患者さんでは、身体機能低下と認知機能低下が同時に認められることもあります。
心不全患者さんは特に注意が必要
心不全は高齢者に多い病気です。また、退院後1年以内に約20~30%の患者さんが再入院すると報告され、再入院率の高さも問題となっています。また、息切れや倦怠感のために活動量が減りやすく、入院による安静が加わることで筋力低下が進行しやすくなります。
その結果、「歩く速度が遅くなる」、「階段がつらい」、「買い物や外出が減った」、「転びやすくなった」など、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
息切れや倦怠感によって活動量が低下しやすい状態となり、サルコペニアやフレイルを合併する頻度が高いことが知られています。
実際に、心不全患者さんの約半数がフレイルを有すると報告されており、フレイルを合併すると再入院や死亡リスクが高くなることも分かっています。
心臓リハビリテーションの重要性
近年では、心不全治療において
①薬物治療
②カテーテル・外科治療
③心臓リハビリテーション
の3本柱が重要と考えられています。
心臓リハビリテーションでは、有酸素運動や筋力トレーニングを通じて体力の回復を目指します。また、再入院予防や日常生活動作(ADL)の維持・改善にも効果が期待されています。
心臓リハビリについてhttps://komorebi-heart.jp/rehabilitation/
心不全や心筋梗塞・狭心症、心臓手術後の方で
「入院後に体力が落ちた」
「以前より歩けなくなった」
「心不全を繰り返したくない」
という方は、一度ご相談ください。
浜松市中央区下池川町にある木もれび循環器内科クリニック(循環器内科・内科)では、狭心症/心筋梗塞、心不全後の心臓リハビリを受け付けております。どうぞお気軽にご相談ください。